ある少女の涙

  朝、ホールで園児たちが長縄とびに挑戦していました。担任が回す長縄を見ながらタイミングを見て入り3回とんで出ていきます。

 ホール内には、長縄が床に打ち付けられる音が響きます。併せて担任が入るタイミングを言葉で合図します。

「はい。はい。いま。いま・・・。」

 他の園児は静かに見守ります。応援してもいいでしょうが、その声援は長縄に入るタイミングを邪魔するものであることを知っているからです。しかし、ひとたび成功すれば、みんなから大きな声援と拍手が送られます。そのくらい、園児にとっては真剣勝負なのです。

 1回目のチャレンジで失敗した園児がおりました。失敗したことが、よっぽど悔しかったのか、担任の背中にしがみついて他の園児のチャレンジを見ていました。やがて再びのチャレンジです。しかも、時間の関係でこれが最終チャレンジになりました。

「はい。はい。いま。いま・・・。」

首でもタイミングをはかっていた彼女は、決心したように縄の中に入りました。1回。2回。3回。成功!!彼女はその後、縄から見事脱出しました。

「できた。やったね。」

担任の声。彼女は激しく担任に抱き着きました。そして、号泣。号泣。号泣。

 よほどうれしかったのでしょう。成功したうれしさはもちろん、緊張感の中から解き放たれたうれしさもあったのでしょう。

 がんばった彼女が一番すごい。でも、それを成功に導いた担任もすごい。

 朝からいいものを見せてもらいました。私も、もらい泣きをしてしまいました。

                            吉田園長